うつ病で働けなくなったとき、真っ先に心配になるのがお金のことです。
お金の心配がネックになって、なかなか会社を休むという決断ができない方もいるのではないでしょうか。
しかし、世の中まだまだ捨てたものではありません。
病気で働けない人を支える制度は、意外と充実しているのです。
私は、人事部門で10年以上働いています。
今まで、人事制度企画、採用、勤怠管理、給与計算、福利厚生、社会保険など、様々な業務を経験してきました。
そのため、会社を休職する前から、公的な制度についても熟知していました。
「お金のことは、なんとかなる」という確信があったからこそ、会社を休職する決心が早めに出来たのかもしれません。
会社を休み始める際は、まず、有給休暇を消化していきましょう。
有給休暇は、労働基準法により労働者に認められている権利です。
「会社の厚意で休ませてやってる」というのは、誤った認識です。
勤続年数によりますが、最大で20日の有給休暇が取得できます。
この期間は、給与が100%補償されますので、ひとまず安心です。
<ご参考>
傷病手当金とは、私傷病で働けなくなった健康保険の被保険者に対して、生活費を支給する制度のことです。
給料の3分の2が支給されますので、生活費としては十分でしょう。
(大手企業の組合健保なら、給料の8割程度が支給されることも。)
所得税・住民税が課税されない点も、受給者にとっては大きなメリットです。
また、支給期間は、最長で1年6ヶ月間あるので、ゆっくりと治療に専念できます。
なお、受給には、以下の条件を満たしていることが必要です。
1.業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2.仕事に就くことができないこと
3.連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4.休業した期間について給与の支払いがないこと
<ご参考>
病気やケガで会社を休んだとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
仕事が原因で、うつ病を患った場合は、労災認定を受けることもできます。
労災が認定されれば、傷病手当金よりも多い、給料の約80%を受け取ることができます。
しかし、健保の傷病手当金と併用できない、認定までに時間がかかる、そもそも認定されるとは限らないといった点で、うつ病を労災申請するケースは少ないです。
うつ病で長期間の治療が必要な方は、自立支援医療制度を活用できます。
自立支援医療制度とは、健康保険加入者の医療費が従来の3割負担から1割負担になる制度のことです。
1ヶ月あたりの医療費に上限があるので、通院回数が多い人ほどお得な制度です。
医療費の上限は年収によって決まりますが、私の場合は、月10,000円が上限でした。
まともに3割負担していたら、リワークや通院の費用を合計すると1ヶ月で数万円となるはずでしたので、この制度には助けられました。
<ご参考>
復職に向けてリワークに通うことを検討すると、交通費の負担が気になってきます。
しかし、安心してください。
リワークの交通費についても、公的な補助を受けられます。
申請は、リワーク施設経由で行いますので、役所に足を運ぶ必要はありません。
補助金も、リワーク施設で受け取れます。
詳細については、お住いの地域の福祉課ホームページを確認してください。
ご参考として、横浜市のリンクを貼っておきます。
<ご参考>
横浜市健康福祉局/障害福祉のあんない/外出を支援するサービス/施設等通所者への交通費補助
うつ病で仕事が続けられず職を失ったとしても、「働く意志」があり求職活動をしていれば、失業手当が支給されます。
雇用保険の加入期間によって受給期間が変動し、年収によって受給金額も変わります。
また、うつ病の治療中で求職活動ができない場合は、支給時期を遅らせる「受給期間の延長」という制度もあります。
<ご参考>
ハローワークインターネットサービス - 雇用保険手続きのご案内
うつ病で働けない状態が長期化した場合、障害年金という支援制度もあります。
障害年金とは、重度の精神障害であると認められた人の生活を支援する制度のことです。
障害年金は、以下の2種類に分けられ、それぞれ受給対象者が決まっています。
・障害基礎年金…国民年金加入者で、障害等級1級または2級に該当する
・障害厚生年金…厚生年金加入者・共済年金加入者で、障害等級1級〜3級に該当する
いずれも「初めて医師の診療をうけてから1年6ヶ月以上経過していること」が受給条件です。
もちろん、国民年金・厚生年金に加入していることが前提条件です。
年金が受け取れるのは老後だけではないこと、ご存知でしたか?
何かとネガティブなイメージが付きまとう年金ですが、いざという時のセーフティネットにもなっているのです。
<ご参考>
精神障害者保健福祉手帳とは、精神障害者に対して、公的機関の費用を割引する仕組みのことです。
制度の対象となる条件は、以下の通りです。
・1級から3級に分けられた精神障害等級と診断されている。
・最初の診察を受けてから6ヶ月以上経過している。
手帳を持っていると、次のようなサービスを受けられます。
・NHK受信料の減免
・所得税、住民税、相続税の控除
・軽自動車税の減免
・生活福祉資金の貸付(無利子あるいは年1.5%の利子で借り受けできる)
・鉄道、バス、タクシー等の運賃割引
・携帯電話料金の割引
・公共施設の入場料等の割引
申請は、お住いの市町村の担当窓口で行ってください。
<ご参考>
精神障害者保健福祉手帳|経済的な支援|治療や生活に役立つ情報|みんなのメンタルヘルス総合サイト
医療費控除とは、一世帯の年間医療費が10万円以上だった場合に、医療費の一部が還付される税制上の優遇措置です。
医療費には、以下の費用が含まれます。
・治療費
・入院費
・検査費用
・医薬品の費用(薬局で購入した市販薬も含む)
・病院への往復交通費
・鍼灸師、柔道整復師による施術費
・松葉杖・義歯などの購入費用
この他にも医療費に含まれるものはあります。
なお、医療費控除を受けるには、税務署で確定申告する必要があります。
確定申告書には、医療費の領収書を添付するため、必ず保管しおきましょう。
通院で公共交通機関を使う場合、通常は領収書をもらいませんので、家計簿等のメモに利用金額を記録しておきましょう。
<ご参考>
1ヶ月の医療費には、自己負担の上限額が定められています。
自己負担の上限額を越えた場合、高額療養費制度により一部が払い戻されます。
この制度の対象者は、健康保険の被保険者です。
なお、自己負担の上限額は、所得や年齢によって異なります。
ざっくり言うと、月収50万円未満の方であれば、年間の医療費自己負担額が10万円を超えることはないでしょう。
<ご参考>
高額な医療費を支払ったとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
ここまで書いてきたように、日本は、病気で働けなくなった人を支える制度が充実しています。
持病を抱えながら働いている人、休職中で復職を目指している人、失業して社会復帰を目指している人など、幅広いニーズに対応しています。
健康なときは、給与明細を見て、年金保険料・健康保険料・雇用保険料の控除が高額であることに憤りを感じるかもしれません。
これらの制度運用には、課題が山積しているのが現状だからです。
しかし、一方で、病気で働けなくなった時のセーフティネットとして機能していることも事実なのです。
私は、うつ病で働けなくなり、このことを実感しました。
とにもかくにも、日本の社会福祉制度は、これだけ充実してますので、病気により働き続けることが難しい場合は、無理せずに思い切って休んでしまいましょう!
以上