今回は、「個人的解釈と非難」という思考エラーについて解説します。
イメージを膨らませるため、「痩せさえすれば人生は充実するはずなのに」という考え方を例に挙げますが、ダイエットをする方以外にも当てはまる思考エラーです。
なので、あくまで一例として捉えていただきたいと思います。
私たちが何かの原因について間違って特定し、思い込むときに起こります。あるときは、実際の状況には何の問題もないのに、何かのせいにします。また別のときは、実際には他の要因も絡んでいるのに、何かを必要以上に責めます。この思考エラーに関係する問題は、次の3つです。
(1)罪悪感:物事がうまくいかなかったことを全部自分自身の責任だと考えるので、問題をひき起こす原因となった行動を「自分はすべきでなかった」と考えます。
(2) 恨み:物事がうまくいかなかったことを全部他の人の責任だと考えるので、問題をひき起こす原因となった行動を「あの人はすべきでなかった」と考えます。
(3)問題以外の部分を直そうとする:車がエンストした原因は、本当はカムシャフトの故障のせいなのに、燃料ポンプの故障だと勘違いすることに似ています。故障したカムシャフトを取り替えずに燃料ポンプを取り替えてしまい、車はエンストしたままということになります。
(リワーク配布資料より抜粋)
物事は、たくさんの要素が複雑に絡み合って成り立っています。
何か一つの要因だけを徹底的に対策しても、事態が好転するとは限りません。
まして、要因だと決めつけたものは的外れだった場合、徒労に終わってしまうことだってあります。
「痩せさえすれば人生は充実するはずなのに」
私の妻は、摂食障害を抱えているため、本人の悩みを聴いたり、関連書籍を読んだりして勉強しました。
あくまで事例の一つですが、摂食障害の方は、「痩せさえすれば人生は充実するはずなのに」という心理状態に陥ってしまうことが多いようです。
「痩せてないから、サークル活動に参加できない。」
「痩せてないから、オシャレができない。」
「痩せてないから、恋愛ができない。」
これらは、客観的に見れば、痩せていなくてもできることばかりです。
しかし、当事者は、痩せていない自分に罪悪感を持ち、「最近太った?」という心無い他人の言葉に恨みを持ち、痩せさえすれば人生は充実すると考え、問題以外の部分を直そうとするのです。
このような思考エラーに陥ってしまう原因は、生育環境や先天的な気質も影響していますが、必ずしも本人の心が弱いからではありません。
痩せている女優やアイドルをもてはやし、ふくよかな芸人さんは氷の湖に突き落として笑いものにするような、メディアの偏った演出がダイエット志向を過度に煽っている気がしてなりません。
繰り返しますが、物事は、たくさんの要素が複雑に絡み合って成り立っています。
「〇〇さえしなけれな、〇〇だったのに」と単純に割り切れることは少ないです。
しかし、思考エラーによって、特定の原因を必要以上に責めてしまうのです。
「痩せていれば、私の人生は充実していた。」
「名門大学に落ちなければ、私の人生は、もっと輝いていた。」
「もっとお金があれば、セレブとして人々から尊敬されていた。」
人生が充実することも、人々の尊敬を集めることも、外見・学歴・財産だけで決まるものではありません。
しかし、テレビやSNSで作り上げられた成功者の像を見ることで、個人的解釈が偏ってしまい、結果として自分や他人を非難してしまうのです。
「個人的解釈と非難」の思考エラーは、外的要因によって引き起こされることが多いというのが、私の個人的な見解です。
以上
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