うつ病から復職しても、病気が再発して再休職になってしまうケースは少なくありません。
そこで近年注目されているのが、復職支援プログラム(通称:リワーク)です。
リワーク利用者と比較して、リワークを利用していない人の再休職リスクは高くなるという調査結果もあり、リワークを利用することによる一定の効果が確認されています。
<ご参考>
リワークプログラムに関するデータと体験談 | メディカルケア虎ノ門
うつ病とリワークを経験し、現在は職場に復帰している私個人の意見としても、リワークは上手く活用すべきだと思います。
リワークとは、return to workの略語です。気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。
(出典:日本うつ病リワーク協会HP)
うつ病で休職している人が復職に向けて会社の上司や人事担当者と面談する際に、復職の準備としてリワークを受けるように提案されることがあります。
うつ病から復職したものの、数か月、短ければ数週間で再休職となってしまうケースもあり、会社側からすれば、確実に働ける状態になってから復職して欲しいのかもしれません。
私から言わせれば、パワハラの厳罰化や過重労働の防止等、会社側が環境を変えるべきだと声を大にして言いたいところですが、現実は厳しいです。
労働環境の改善を要求しつつ、患者自身も、再休職にならないよう準備することが必要なのです。
プログラムに応じて決まった時間に施設へ通うことで会社へ通勤することを想定した訓練となります。また仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われます。
また、初期には久しぶりの集団生活になれるための軽スポーツやレクレーションが行われることがあります。プログラムの途中では、休職になった時の働き方や考え方を振り返ることで休職に至った要因を確認するとともに復職した時に同じ状況(休職)にならないための準備もしていきます。
1人で復職に向けてリハビリを行うときに不安を感じる場合は、主治医に相談してリワークプログラムを紹介してもらうとよいでしょう。(出典:日本うつ病リワーク協会HP)
当ブログでも、認知行動療法・芸術療法・作業療法といった様々なリワークの体験談を紹介しているとおり、一口に「リワーク」といっても、その中身は実に多種多様なのです。
復職の前後では、会社の人から「リワークって、どんなことするの?」と聞かれることが多かったですが、簡単には説明できず困りました。
ただ、リワークならではの特徴を一つ挙げるとしたら、認知行動療法といった心理療法を受けられることです。
プロの心理士の指導の下、同じような境遇の患者同士で意見交換しながら理解を深めていくので、下手な研修より断然身につきます。
●医療機関で実施(医療リワーク)
医療機関で行い、復職支援に特化したプログラムが実施され、再休職の予防を最終目標として働き続けるための病状の回復と安定を目指した治療です。診療報酬上の枠組み(精神科デイケア、精神科ショートケア、精神科デイ・ナイト・ケア、精神科作業療法、通院集団精神療法など)で多職種の医療専門職(医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理職など)による医学的リハビリテーションとして実施します。健康保険制度や自立支援医療制度を利用でき、費用の一部自己負担があります。
●地域障害者職業センター(職リハリワーク)
独立行政法人高齢・障害・求職支援機構により各県に1カ所以上設置されている地域障害者職業センターが実施しています。職場復帰支援(リワーク支援)の名称で、センターの職業カウンセラーが、休職者本人と雇用主、主治医をコーディネイトし三者の合意を支援し、12~16週の職業リハビリテーションを実施します。目的は職場への適応に向けた本人と雇用主への支援であり、病状を回復させるための治療ではない点が医療機関のプログラムとの最も大きな違いです。費用は無料です。ただし公務員は利用できません。
(出典:日本うつ病リワーク協会HP)
リワークは、医療機関が実施するもの(有料)と行政が実施するもの(無料)に大きく分けられます。
行政実施の職リハリワークは、無料という点で魅力的に感じますが、いろいろとデメリットも多く、私は利用しませんでした。
<デメリット>
・受け入れ人数が限られており、空席待ちになる。
・リワークの開始日と終了日を柔軟に決められない。
・基本的に各県1カ所に設置のため、自宅近隣に施設がない。
(神奈川県の場合)
受け入れ枠の空き状況については地域によって事情が異なるかもしれませんが、利便性の面では、かなり条件が悪いというのが私の感想です。
医療機関の実施するリワークは、有料ではあるのですが、自立支援医療制度を利用すれば、費用を安く抑えることができます。
健康保険適用(3割負担)だけでは、1日分の自己負担額が2000円~3000円になってしまいますが、自立支援医療制度を使えば、1割負担に減額されるうえに、月々の負担額が上限に達したら無料になります。
私の場合は、1日のリワーク費用が700円で、月々の負担額上限は1万円でした。
まともに3割負担していたら、数万円の出費になるところでした。
検討した結果、私は、自宅から通いやすい病院の実施しているリワークプログラムに参加しました。
「自立支援医療制度」の話をしましたが、精神疾患の患者さんを支える支援制度等については、以下の記事にまとめています。
「で、リワークって、どうやって始めるの?」
と疑問に思った方のために、私の体験談を交えて、リワーク開始までの流れを以下の通りまとめます。
1.主治医に相談
まずは、主治医にリワークの相談をしましょう。
主治医の病院がリワークを実施していれば話は早いですが、そうでない場合でも、リワークを実施している他所の病院を紹介してくれます。
2.リワークの見学
主治医に紹介された病院に電話してみましょう。
久しぶりの電話で緊張するようなら、事前に病院のホームページ内のリワークに関するページを読んでおくのもいいでしょう。
電話で見学時間の予約をしたら、いざ、現地に行ってみましょう。
現地では、リワーク担当者からプログラムの説明を受けたり、リワークの様子を見学をさせてもらいます。
3.主治医の紹介状
何カ所か見学して、気に入った病院があったら、主治医からその病院宛に紹介状を書いてもらいましょう。
ここまで来れば、あと一息です。
4.リワークの開始
主治医に紹介状を書いてもらえば、準備は万全です。
リワークを実施する病院で、リワークの開始に向けた本格的な面談を行います。
いつから開始するのか、病院側と調整しましょう。
終了時期については、もし休職期限が迫っており解雇寸前の場合は、正直に相談しましょう。
普通の病院であれば、そういった事情も考慮して柔軟に対応してくれるでしょう。
私の場合は、休職期限に余裕があったので、3ヶ月間程度の予定を組み、様子を見て復職時期を判断することになりました。
5.リワークの初日
開始時期が決まれば、あとはリワーク参加の初日を待つだけです。
どんなことでも最初は緊張するものです。
まして、うつ病を患っている状態ですから、私も初日はナーバスになりました。
しかし、安心してください。
リワークの現場は、プロの心理士さんと、同じ悩みを抱える仲間の集う暖かな場所です。
また、会社を休職中の人は、3ヶ月~6ヶ月くらいでプログラムを終了するので、入れ替わりが非常に速いです。
そのため、環境に慣れずソワソワしているのは、自分だけではありません。
基本的に、みんな新人です。
そして、数週間も通えば、ベテランっぽくなります。
リワークについて、イメージを膨らませていただけたでしょうか?
私は、リワークを受けて復職した後は、1年半経った今でも再休職することなく、それなりに生き生きと働いています。
リワークを受けて良かった、自分にとってプラスになったと心から思えるからこそ、こうやってブログで情報発信をしています。
リワークを受けるのは、会社のためではなく、自分のためです。
ストレス耐性をつけて、パワハラにも激務にも耐えられる社畜として復活することがリワークの目的ではありません。
強すぎる自責の念を和らげ、理不尽なことからは適度に距離を置ける器用さを身につけられることが、リワークのメリットだと考えています。
リワークに通う人の多くは、長い年月を費やして会社に尽くしてきました。
病気になったことをきっかけに、自分の幸福について、もっと前向きに考えてもいいのではないでしょうか。
以上
<参考サイト> 日本うつ病リワーク協会