自分と他人は、別の人格を持っています。
当たり前のことですよね。
しかし、わかっていても、ついつい自分の価値観で他人の言動を評価してしまいます。
それは、自分の信念を他人に投影しているからです。
今回は、20番目の思考エラーです。
「投影」について解説します。
私たちは、信念が自分自身のものであるにもかかわらず、他の人も同じことを考えているに違いないと思い込むことがよくあります。だから他の人の動機も自分の動機と似ていると思い込みます。
私たちの社会では、多くの人に共通して見られる信念がいくつもあることは事実です。だからといって私たちが皆、まったく同じように考えているわけではないことも事実です。二人として同じ願望、好み、嫌いなもの、意見、価値観、道徳観を持っていることはありません。
したがって、他の人はあなたと同じように考え、感じ、望んでいるに違いないと思うことは誤りです。私たちは皆違います。投影は、あなたがある動機を持つ人を責めるときに起きます。それは、あなた自身が同じ動機を持っているからです。投影はマインド・リーディング(読心)のひとつ。
(リワーク配布資料より抜粋)
自分の価値観を他人に重ねてしまうことは、認知の歪みに他ならないということです。
日本は島国なので、「我が国は単一民族国家である」という思い込みから、みんな同じ様に考えているはずだし、そうあるべきだという偏見に陥る人も多いのではないでしょうか。
まして、学校や会社といった狭い組織に身を置けば、この「投影」という思考エラーは、ますます色濃く表れるものと思われます。
例えば、会社ではどのように「投影」が起こっているでしょうか?
とあるワンシーンを想定して解説します。
A君(よし、定時になった。)
「お先に失礼します。お疲れ様です。」
上司「・・・お疲れさん。」
(あいつ、俺より先に帰りやがった。)
(やる気の無い奴だ。それに、俺のことを慕ってないな。)
これは、典型的な「投影」ですね。
上司が「やる気」や「自分の上司への敬意」を夜遅くまで残業で示してきたから、その価値観を部下のA君に投影してしまっているのです。
逆に、A君が上司に自分の価値観を「投影」していることも考えられます。
A君「俺の上司は、いつも遅くまで残業して家庭を疎かにしている。」
「きっと、家族への愛が無い、冷たい人間なんだろうな。」
ここでも、「投影」が起きています。
A君は、家族と過ごす時間を大切にすることが「家族への愛」であるという価値観を持っていて、それを上司に「投影」しているのです。
本当は、上司だって家族を愛しているけど、働き方を変えられないだけかもしれません。
A君と上司の価値観のどちらが正しいかという話ではありません。
自分の価値観を、相手に「投影」してしまうことで、お互いにとって不幸な誤解を生みだしていることが問題なのです。
他人の言動に憤りを感じたときは、「投影」という思考エラーが起きているかもしれません。
そんなときこそ冷静になって、なぜ憤りを感じているのか、その理由は相手にも当てはまるのか、といったことを考えてみましょう。
あなたが独自の価値観を持っているのと同様に、他人もまた、一人ひとり違った価値観を持っているのです。
以上
次:【思考エラー21】うつ病の原因は、支配的な存在か?
前:【思考エラー19】うつ病の原因は、「可能性と確率の混同」なのか?
<まとめ>