うつ病を患うと、認知の歪みによって思考エラーが引き起こされます。
また、思考エラーが原因でネガティブな感情を反芻することにより、鬱症状が悪化することもあります。
私は、リワークプログラムで26個の思考エラーを学びました。
このブログでは、それらを一つずつ解説してきました。
そして今回、ついに26個目の思考エラーに到達しました。
最後の思考エラーは、「相関関係と因果関係の同一視」です。
2つのことが同時に起こった場合(相関関係)、そのうちのひとつがもうひとつを引き起こした(因果関係)と考えることがときどきあります。感情のABCを学ぶ前なら、あなたに向かって誰かが言ったことで嫌な気持ちになったとしたら、その言葉がそうさせたと結論づけるかもしれません。しかし、その発言とあなたが味わった感情がほぼ同時に起こったために、そのように見えるだけなのです。2つの物事が同時に起こったように見えても、ひとつの物事がもうひとつを引き起こしたとは限りません。
「A」と「B」が同時に起こる場合:「A」は「B」を引き起こした可能性がある:「B」は「A」を引き起こした可能性がある:「C」は、「A」と「B」の両方を引き起こした可能性がある。心配の魔法と個人的解釈と非難の関連。
(リワーク配布資料より抜粋)
26個目の思考エラーは、過去記事で解説した思考エラーと関連付けられます。
「個人的解釈と非難」
何かの原因を間違って特定し、思い込むことです。
例えば、痩せていないことが人生で上手くいかないことの根本原因であると思い込み、過度なダイエットに走るケースでは、この思考エラーを引き起こしていると考えらえます。
「心配の魔法」
現実には、あまり起こりそうにないことを心配して、いつの間にか心配することで安心感を得てしまうことです。
「備えあれば憂いなし」とは言いますが、常に頭の中まで心配事に支配されてしまっている状態は、思考エラーかもしれません。
これら2つの思考エラーは、それぞれAという事象の原因がBだと決めつけています。
「個人的解釈と非難」では、AとBの因果関係を誤認しています。
「心配の魔法」では、Bが発生する可能性が限りなくゼロに近くても、心配で夜も眠れない状態です。
そして、26個目の思考エラーである「相関関係と因果関係の同一視」では、AとBに加えCという出来事についても考えられています。
出来事ABCを理解するためには、子育ての事例がイメージしやすいです。
例えば、子どもが泣き止まない、親の言うことを聞かない、こんなことは日常茶飯事ですよね。
そんなとき、親は、ついついイライラしてしまいます。
赤ちゃんのときは我慢できたとしても、子どもが大きくなるにつれて、生意気なことも一人前に言うようになるので、仏のような心を保ち続けるのは至難の業です。
親のイライラした表情や態度を敏感に読み取って、子どもの機嫌は、さらに悪くなります。
叱りつけようものなら、もう家の中は修羅場と化しますね。
このような負のスパイラルを、子育て経験者なら一度や二度は、経験したことがあるはずです。
子育て経験の無い方でも、大人同士の人間関係で似たような状況に陥ったことのある方は多いのではないでしょうか。
この事例は、以下の相関関係が成り立ちます。
A:子どもが泣く、言うことを聞かない。
B:親がイライラする。
これらの同時に起こった出来事は、相関関係なのです。
一見すると、因果関係のように見えますが、本当の原因である出来事Cは、他にあります。
例えば、親が激務で疲れ果てていて、家庭の空気が重くなっていたらどうでしょう?
これを出来事Cとしたら、AとBの両方の原因となっていると考えられませんか?
AとBを因果関係だと誤解し、抜けられない負のスパイラルだと思い込んでしまうと、出口は見つかりません。
しかし、根本原因であるCに気付くことが出来れば、それに対処することでAとBが一気に解決することもあります。
激務に耐えきれず、うつ状態になっていたら、メンタルクリニックを受診したり、会社を休職したりすることを検討しましょう。
根本原因である出来事Cの存在を意識し、それが何かを見つけることが重要なのです。
「思考エラー」というシリーズで、認知の歪みの原因となる事象を一つずつ解説してきましたが、今回で最終回です。
うつ病を一旦は寛解させた私の経験上、うつ病の治療には、投薬治療だけでなく認知の歪みを治していく心理療法も大切であると考えています。
26個からなる「思考エラー」を学ぶことで、自分にとって特に当てはまる認知の歪みが何個か見つかるはずです。
プロではなく患者目線で、しかも拙い文章で書き綴っていますが、きっと一つや二つは読者の皆様にとって役立つワードが見つかると思いますので、最終回から読まれた方も、過去の記事を読んでいただけたら幸いです。
以上
<まとめ>