うつ病の原因の一つは、認知の歪みです。
認知行動療法の研究者である、Dr.Aldo Pucci(アルド・プッチ)は、認知の歪みを26個の思考エラーに細分化しました。
このブログでは、26個の思考エラーを一つずつ解説してきました。
今回は、26個の思考エラーを一つの記事にまとめます。
気になる項目があれば、詳細は過去記事のリンクを参照してください。
- 1.白黒思考
- 2.過度の一般化
- 3.思考フィルター
- 4.長所の値引き
- 5.結論の飛躍
- 6.拡大解釈
- 7.感情がらみの推測
- 8.不都合なレッテル貼り
- 9.個人的解釈と非難
- 10.不合理な「すべき」宣言
- 11.「必要」と「願望」の混同
- 12.「選択」と「強制」の混同
- 13.我慢できない
- 14.破滅思考
- 15.心配の魔法
- 16.不合理な定義づけ
- 17.「頼る」と「依存」の混同
- 18.「能力がない」と「気が進まない」の混同
- 19.「可能性」と「確率」の混同
- 20.投影
- 21.「感情」より「意見」で動揺する
- 22.無意味な「たられば」
- 23.不合理な絶望
- 24.多すぎ少なすぎ問題
- 25.相反信念
- 26.相関関係と因果関係の同一視
- 最後に。
1.白黒思考
「全か無か」の枠で物事を考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「第一志望の学校に落ちた。自分は一生落ちこぼれだ。」
そんなことありません。志望校に落ちても勉強したことは無駄になりません。
どこの学校に行っても、そこでしっかり勉強すれば、落ちた志望校の生徒よりも充実した学生生活が送れるかもしれません。
2.過度の一般化
無意識に物事を誇張して考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「私は、いつも失敗ばかりしている。」
本当にそうでしょうか?
もしかしたら誇張して考えているだけかもしれません。
人間であれば、少なからずミスは犯します。
上手くできたことにもスポットライトを当ててみましょう。
3.思考フィルター
自分が思い込んだ通りに物事を解釈してしまう思考エラーです。
例えば・・・
「あいつは自分のことを嫌っている。誉め言葉も嫌味で言っているに違いない。」
どんなに褒められても、「相手が自分のことを嫌っている」という思考フィルターを通すと、「嫌味を言っている」という解釈になってしまいます。
4.長所の値引き
「長所の値引き」は「思考フィルター」と連動します。
「自分は劣った人間である」という思い込みを裏付けするために、自分の長所を値引きして考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「仕事の成果を褒めてもらえたけど、誰にでも出来る簡単な仕事をしてるだけだ。」
相手が本心で褒めていたとしても、自分に価値が無いと思い込んでしまうと、それを裏付けるために「価値の無い仕事をしている」と考えてしまうのです。
5.結論の飛躍
じっくりと考えないで、性急に結論付けてしまう思考エラーです。
相手の話をよく聞かないで何を考えているか決めつけてしまい、仲違いの原因にもなります。
例えば・・・
妻「お隣さんは、遊園地に行ってきたらしいよ。」
夫「俺が家族サービスしないことが不満ってことか!?」
この夫は、奥さんが「お隣さんが羨ましい。それに比べて我が家は。」と考えていると完全に決めつけていますね。
6.拡大解釈
欠点の大きさを強調したり、質の高さの重要性を最小限に抑えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「服に小さな染みがついた。こんな服は、恥ずかしくて着られない。」
小さな染みがついたところで、服全体が汚れて見えるわけではありません。
他人は、服の小さな染みなんて見ていないし、滅多に気付きません。
7.感情がらみの推測
抑うつ的になっているときは、物事を悲観的に見てしまうという思考エラーです。
例えば・・・
「仕事が山積みだ。もう自分には処理しきれない。」
こんなとき、タスクを一つひとつ書き出して、優先順位をつけてみてください。
一度にやろうとしたらパンクする量でも、優先順に取り掛かれば、意外と滞りなく処理できるかもしれません。
ただし、タスクを整理してうえで物理的に無理だと判断される場合は、別問題です。
8.不都合なレッテル貼り
対象を正しく表現していない言葉によって、誤ったイメージを植え付けてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「あの生徒は劣等生だから、何を教えても無駄だよ。」
劣等生のレッテルを貼られて、勉強や部活のモチベーションが上がる生徒なんているのでしょうか。
9.個人的解釈と非難
何かの原因について間違えて特定し、思い込むときに起きる思考エラーです。
例えば・・・
「痩せさえすれば、人生もっと上手く行くはずだ。」
人生は、体型だけですべてが決まるわけではありませんよね。
上手く行かないことがあれば、そこには様々な原因があるはずです。
10.不合理な「すべき」宣言
「~すべき」という絶対的なルールに縛られてしまう思考エラーです。
この思考エラーは、怒りと罪悪感を生み出します。
例えば・・・
「私は、こうすべきだと思うから、それに従わない奴には怒りを感じる。」
「本来は、これをすべきなのに、ちゃんと出来ていない自分に罪悪感を感じる。」
自分にも他人にも厳しいタイプの人は、「すべき」という思考が強いのかもしれません。
11.「必要」と「願望」の混同
ただ欲しいという願望のある物と、絶対に必要な物を混同してしまう思考エラーです。
例えば・・・
「いつも買ってるシリアルが売り切れている。もう朝食が食べられない!」
こんなパニックを起こす人は少ないと思いますが、「必要」と「願望」は混同しないようにしましょう。
12.「選択」と「強制」の混同
嫌いなことを強制されたと感じて恨みを抱くという思考エラーです。
本当の「強制」とは、暴力で脅されたときだけです。
例えば・・・
「また強制的に飲み会の付き合いだよ。嫌だなぁ。」
現実問題として断りにくい、断ったら何されるかわからないという反論が返ってきそうですが、暴力で脅されていない限り「強制」ではなく、自分で「選択」しているだけなのです。
13.我慢できない
11番目の思考エラー「必要と願望の混同」の延長線上にある思考エラーです。
自分の我慢する能力を過小評価することにも繋がります。
例えば・・・
「私は、朝食は米じゃないと食べれない人間なんだよね。」
小麦アレルギーの方にとっては真実かもしれませんが、そうでなければ思考エラーを起こしている可能性が高いです。
14.破滅思考
「破滅思考」も、11番目の思考エラー「必要と願望の混同」の延長線上にある思考エラーです。
ちょっとした願望が叶わないだけなのに、生命の維持に必要な重大なものを失ったかのように誤解することで、破滅思考が生まれます。
例えば・・・
「破滅だ。この世の終わりだ。」
自分自身にとっては死活問題なのかもしれませんが、簡単にこんなセリフが出てきてしまう場合は、思考エラーを起こしているかもしれません。
15.心配の魔法
心配すれば嫌なことは起こらないと信じてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「準備万端で心配無いけど、何か忘れている気がする。」
あれこれ心配している方が、かえって安心することがあるようです。
16.不合理な定義づけ
愛などの重要な概念に、非現実的な定義づけをしてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「愛していれば、すべての時間を私に捧げてくれるはずだ!」
愛情を感じるために非現実的な無理難題をパートナーに求めても、その欲求は満たされないかもしれません。
17.「頼る」と「依存」の混同
他人に仕事を任せることは、自分に能力が無いことを意味すると考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「資料作りを同僚にやらせてしまった。私は無能だ。」
同僚に仕事を頼むのも立派な仕事です。
一人でやれることは限られているので、積極的に人を頼りましょう。
18.「能力がない」と「気が進まない」の混同
気が進まないだけなのに、「自分には能力がないから」と決めつけてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「自分には、運動習慣を身につける能力がないから無理だ。」
歩ける人であれば、毎朝ウォーキングくらいはできます。
毎朝が厳しければ、1日置きでもいいのです。
19.「可能性」と「確率」の混同
将来何かが起こったらどうしようという不安が強すぎて、何かが起こる可能性を必要以上に高く見積もってしまう思考エラーです。
例えば・・・
「将来、病気で働けなくなるかも。高額の保険に複数加入しておこう。」
もし現時点で体がすこぶる健康なら、毎月払っている保険料の額が妥当なのか再検討してもいいでしょう。
20.投影
自分の価値観を投影して、相手も同じように考えているはずだと考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「今年の新人は、毎日定時で帰ってる。やる気のない奴だ。」
やる気は労働時間と作業量で示すものだという価値観を投影すれば、このように感じるのも無理はありません。
でも、新人さんは、時間当たりの業務効率を高めて会社に貢献しようと頑張っているかもしれません。
21.「感情」より「意見」で動揺する
「不合理なすべき宣言」によって感情が揺れてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「毎朝、床をキレイに磨かないと怒られる。」(誰に?)
掃除を徹底的にやるように指導されてきた場合、その支配か解放された後も、「掃除を完璧にすべき」という強迫観念にも似た「べき思考」に悩まされるかもしれません。
22.無意味な「たられば」
過去に起こった嫌な出来事に縛られて、「もし~でさえあれば。」と反芻してしまう思考エラーです。
例えば・・・
「もし、また失敗したら傷つくだろうから、もう挑戦しないでおこう。」
過去の嫌な出来事を思い出す理由は、嫌な気持ちを反芻するためではなく、過去から学ぶためです。
人は、過去に縛られることも、過去から学ぶこともできるのです。
23.不合理な絶望
①自分にできないと思い込み、②難しい問題に過剰な恐怖心を抱き、③専門家の意見を無批判に受け入れて、やっぱり自分には無理だと決めつける思考エラーです。
例えば・・・
ダイエットのためにジョギングを始めようか検討しているとして、
①「私は、昔から運動が苦手だった。」
②「スポーツ用品店で靴を選ぶのも難しそうだ。」
③「この前、ダイエットブログに、運動よりも食事で痩せろと書いてあった。」
結論:「やっぱりジョギングは、やめておこう。」
運動習慣を持つことは、健康上好ましいことですが、思考エラーによって諦めてしまうこともあるでしょう。
24.多すぎ少なすぎ問題
「~しすぎである」という自分の特質が、自分の目標達成を阻んでいると考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「私は太りすぎているので、恋愛なんて出来ない。」
体重300キロを超える巨漢だったら、外出もままならないので、ある程度は真実かもしれません。
しかし、そうでないなら、太っていることが本当に目標達成を阻んでいるのか考えてみる必要があります。
25.相反信念
ある信念に従って行動できないことで、罪悪感を抱いてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「もっと勉強をするべきなのに、できていない自分はダメな奴だ。」
確かに勉強は大切なことですが、今の自分にとって本当に必要なことなのか、自問自答してみてください。
そこまで勉強する必要に迫られているわけでもないのに、無用な心配をしているだけかもしれません。
26.相関関係と因果関係の同一視
2つのことが同時に起こった場合(相関関係)、そのうちのひとつがもうひとつを引き起こした(因果関係)と考えてしまう思考エラーです。
例えば・・・
「子どもが泣くと、イライラしてしまう。」
本当に、子どもの泣き声がイライラの原因なのでしょうか?
寝不足や仕事のストレスで疲労していることが根本的な原因で、「子どもが泣いていること」と「イライラ」は相関関係にあるだけということも考えられます。
最後に。
思考エラーについて学ぶメリットは、自分の考え方の癖を客観的に見られることです。
「自分は、こんな時に落ち込む傾向がある」ということを知っておけば、嫌なことがあっても鬱にならないように対策しやすいのです。
26個もあれば、誰でも一つや二つは身に覚えがあるはずです。
むしろ、26個すべて当てはまっていても不思議ではありません。
気になった思考エラーについては、自分の境遇に照らし合わせながら熟読することをオススメします。
可能であれば、家族や友人と意見交換してみてください。
話すだけでも自分の考えを整理できるし、目から鱗の落ちるような意見を相手から聞くことも出来るかもしれません。
そして、いつかは自分で自分をカウンセリング(セルフカウンセリング)できるようになれば最高ですね。
以上