パワハラは深刻な社会問題です。
私たち労働者は、パワハラに対して断固として「NO」と言うべきです。
今回は、執拗なパワハラによって命を落としてしまった准看護師の判例を紹介します。
シリーズ2回目にして、現実に起きたことが信じられない判例を見つけてしまいました。
病院内で起きた准看護師同士のパワハラにより被害者が自殺してしまった事件なのですが、その内容が壮絶過ぎます。
事件の概要は以下の通りです。
X(男性)はY病院に入社し、看護師資格の取得を目指し看護専門学校に通学しながら准看護師として勤務していました。同病院には男性准看護師5名が勤務しており、Aが一番上の先輩で、Xが一番下の後輩でした。男性准看護師の間では先輩の言動が絶対的とされ、一番先輩であるAが後輩を服従させる関係が継続しており、AからXに対し、次のようないじめや嫌がらせがありました。
① 勤務時間終了後も、Aらの遊びに無理矢理付き合わされたり、Xの学校試験前に朝まで飲み会に付き合わされた。
② Aの肩もみ、家の掃除、車の洗車などの雑用を一方的に命じられた。
③ Aの個人的な用事のため車の送迎等を命じられた。
④ Xが交際している女性Bと勤務時間外に会おうとすると、Aから仕事だと偽り病院に呼出を受けたり、AがXの携帯電話を無断で使用し、Bにメールを送る等した。
⑤ 職員旅行において、AがXに一気のみを強い、急性アルコール中毒となった。
⑥ 忘年会においてAらがXに対し職員旅行におけるアルコール中毒を話題にして「あのとき死んじゃったら良かったんだよ、馬鹿」「うるせえよ、死ねよ」等と発言した。その後も引き続きAらは、Y病院の仕事中においても、Xに対し何かあると「死ねよ」と告げたり、「殺す」などの文言を含んだ電子メールを送信した。
⑦ 自殺直前、Xはからになった血液検査を誤って出したところ、Aにしつこく叱責された。同日のY病院外来会議で、からの検体を出したり、Xの様子がおかしいことが話題になったところ、Aはその席で、Xにやる気がない、覚える気がないなどとXを非難した。
(厚生労働省「あかるい職場応援団」より抜粋)
業務上の指導ですらありません。
ただの「いじめ」です。
もはや、明らかな犯罪行為です。
この判例は民事裁判ですが、刑事告訴されてもおかしくない内容です。
平成16年の裁判ですから、今ほど「いじめ」を刑事告訴する意識が芽生えていない時代だったのでしょうか。
この事件に対する率直な感想として、職場というより学校で起こる「いじめ」に近いと思いました。
加害者の准看護師は、良心や自制心が育まれないまま大人になってしまったのでしょうか。
職場の後輩を、ヤンキーの舎弟のように扱う行為からも、精神的な未熟さが滲み出ています。
10年以上前の事件ですから、現在は30代後半くらいでしょうか。
少しは大人になれたのでしょうか。
この加害者が、今でも医療現場に身を置いていないことを祈ります。
裁判の話に戻りますが、判決としては、加害者に1,000万円、勤務先の病院に500万円の損害賠償命令が下されました。
加害者については言うまでもありません。
むしろゼロが1個足りないんじゃないの?と思ってしまいます。
病院側については、「いじめ」を防止する安全配慮義務はあったけど、自殺までは予見できなかっただろうという判断で、500万円の損害賠償という判決になったようです。
つまり、病院側は、「いじめ」を防止する安全配慮を怠ったと認められたのです。
院内に「パワハラ相談窓口」を設けたり、職場の管理監督者が被害者の異常に気付いて面談を行ったり、組織として取り組める防止策は、いくらでもあったはずです。
私たち労働者は、職場内の犯罪行為(パワハラ)を許してはいけません。
「生活費のために」と我慢しているうちに、大切な命を失いかねません。
命を削って生きる糧を稼ぐなんて、本末転倒です。
現在は、パワハラに対する世間の目が厳しくなりつつあるので、会社も防止策に取り組み始めています。
しかし、内部に訴えても埒が明かなければ、積極的に外部の力を頼りましょう。
例えば、過去記事で紹介した日立子会社パワハラ事件は、外部団体の監視が上手く機能した例です。
最後にもう一度、声を大にして言います。
パワハラは、絶対に許さない!!
以上
【参考サイト】